大声で鳴きながら飛び、急降下するときに尾羽ですさまじい風切音を立てることから、カミナリシギともよばれるオオジシギ。日本列島からサハリン南部でしか繁殖しない、世界的な希少種です。春にオーストラリアから渡ってきます。北海道の原野などにはまだ多いのですが、本州の繁殖地は非常に局地的で、いずれも危機的な個体数です。
オオジシギ(カミナリシギ)
長野県では霧ヶ峰、軽井沢、野辺山、菅平などに少数生息しています。あーすわーむと長野県環境保全研究所では、近年その実態を調べてきました。主な生息地である霧ヶ峰や軽井沢は、火山の歴史や飼馬の歴史が生息地を維持してきたことがわかりました。軽井沢では、湿生草原のリゾート開発によって生息地を追われたオオジシギが、減反政策による水田の休耕地化で生じた二次草原に避難した歴史もわかりました。霧ヶ峰も軽井沢も、今後は二次草原の野焼きや草刈りが持続されないと、繁殖地の維持が難しいことも見えてきました。長野県全体でも、現在50つがい程度しか生息していないようです。
3/20の公開セミナー:講演『カミナリシギがシンボル 〜軽井沢の草原生態系〜 』
2012年の春、こうした実態を、長野県環境保全研究所主催の公開セミナーや
http://www.pref.nagano.lg.jp/xseikan/khozen/sizen/seminar23-2_abstract.pdf
研究報告書によって
http://www.pref.nagano.lg.jp/xseikan/khozen/khokoku/pdf/8-3.pdf
公表しました。
また、『軽井沢のホントの自然』(ほおずき書籍)という本も、「“森の町” 軽井沢の貴重な自然は、むしろ田園地帯にある」ことをアピールするため、時期を合わせて出版したものです。
5/20の観察会:朝霧の中で地域の自然史に思いを馳せる
さらに5月20日、夜明け前に活発なカミナリシギの音声を聞く会を開きました(県環境保全研究所とあーすわーむ共催の『自然ふれあい講座』)。午前2時半という集合時間にもかかわらず、県内各地から、定員(20名)を超える参加者が集いました。カエルの声を聞き、今や休耕田でしか生きられない希少鳥類を観察し、オオジシギをシンボルとした湿生草原の価値と今後の保全について、感じることを分かち合う機会になりました。
休耕田で草原性の小鳥を観察
コヨシキリ
ホオアカ
ノビタキ