9月26日に高知県中土佐町で「獣害対策に愛犬の能力をいかそう!」という講習会(NPO法人四国自然史科学研究センターと中土佐町農林課の共催)があり、講師として出席しました。
海に近い山林で、小さな尾根と農地・集落が入り組んでいる環境。野生動物との緩衝地帯がなく、放棄された柑橘類やビワの木が残っていました。畑の多くが家庭菜園のため、防除柵はほとんどなく、サルの被害に悩まされているというのもよくわかります。
6年前にモンキードッグ事業を導入して3年間実施したそうですが、スワレ、フセ、コイ、マテなど服従課目の訓練を行い、サルが来たらただ犬を放すという、訓練と作業がリンクしていないものでした。ただ放すだけの追い払いなら、犬の素質さえ選べば訓練はいらないぐらいです。木の上まで犬が登って来ないことは、サルたちにすぐ悟られてしまうので、効果が出るのは最初だけです。
3頭のモンキードッグのうち、高齢で引退した犬の散歩中にたまたま出会いました。「犬でサルを追っ払おう思うたら、訓練はずっとせないかんね。ただ犬だけ山に放したち、サルがすぐに慣れてしまうき」と、まさに的を射た飼い主の感想。「飼い主もいっしょに山に入らんといかんきに、年取ったら難しいきね〜」とも。集落の高齢化が野生動物の侵入の大きな要因だった場合、さらに高齢者に負担をかけるような方法では長続きしないのかもしれません。
犬の能力を使いきらずに「犬なんて役に立たない」「犬より猿の方が賢いからダメだ」という話が広まるのは残念でなりません。今回の講習会も、住民の方の参加が少なく、行政関係者の方が多い状態でした。でも、複数の行政担当者に、これまでの失敗の原因と、今後の改良点を理解してもらえたと思います。
おそらく同じ原因で、各地ともモンキードッグのブームは下火になってきていますが、獣害対策としてポテンシャルの高い方法です。ただし、追い払いに必要な訓練と競技会的な服従訓練とは全く別ものです。また、犬を「切り札」と位置づけるのではなく、総合的な対策のうちのひとつの手段と考えることが大事です。そして何より、ただ犬を放すのではなく、その地域に合った方法をみつけていくことです。
これからも正しい理論と実践で、興味を持って取り組もうとしている地域をサポートしていきたいと思います。
(山下)