2017年09月13日

清流の生きものと上流の開発

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 夏の終わりに、軽井沢町教育委員会(生涯学習課)主催の「トムソーヤクラブ」の野外体験を、あーすわーむが受け持ちました。川の上流部、集落が尽きて畑が多くなる山裾の環境です。久しぶりに夏が戻った日差しの下、小学生10余名が清流に入って石の下などに潜む虫を探し、カゲロウやトビケラなど、多彩な昆虫の採集・観察をしました。あーすわーむには渓流釣りの達人がいます。魚の目とキモチを持てば、どこに何がいるかすぐわかることが、その腕前で示されました。「自分がヤマメならここに住みたい」という場所が見えるのです。
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ヤマメ
 その川は、数年前までカジカが多い、水の澄んだ流れでした。でも、このたび川に入ってみると、すぐに泥が巻き上がって濁りました。カジカは少なく、今までいなかったアブラハヤが多く確認されました。
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カジカ(左)とアブラハヤ(右)
 思えば最近、さらに上流で、山を削るほど大規模な開発がありました。そこから流れ出た土砂が川底の砂利の間に沈殿し、水を濁らせる原因になっていることが考えられます。削られた山の植生が回復するまで、しばらく泥がたまった状態が続くかもしれません。それまでカジカが生き残っていればよいのですが……。こうした環境の変化にいちはやく気づくのが、私たちの使命なのだろうと思います。
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 でも、小学生にはとてもそんな話はできません。まず生きものと遊んで、自然に親しみ、自然を好きになるべき年頃なのです。いきなり自然破壊、地球温暖化、外来生物などの話をしてしまうと、自然は何だか暗く怖い世界と思ってしまい、自然嫌いの人間を作ってしまうと指摘されています。
 自然とのふれあいは、年齢に応じて段階的に行われたいものです。まず、身近に楽しい場所があることを知り、ランドスケープを広げていくことが大事です。その先に、たとえばホッキョクグマのおかれている現状が想像でき、行動できるようになっていくのです。
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2017年05月23日

最近の屋根裏事情

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床下に出入りするハクビシン。ジャコウネコ科で、尾が長くスリム。
 あーすわーむでは、外来種のアライグマとハクビシンを生態系から排除する仕事を請け負っています。森の中の別荘は、人が留守のことが多く、床下に動物が入り、そこから壁の中づたいに天井裏へ行き、そこで冬ごししたり、子を産んだりすることが少なからずあります。天井裏で物音がするという通報を受けて調べてみると、テンとハクビシンのことが比較的多く、ハクビシンの場合は罠を仕掛けて捕獲します。アライグマはまとまった数が捕れた時期もありますが、最近は密度が減っています。でも、赤外線センサーカメラに写ることはあるので、根絶できていません。また、シカやイノシシの罠にかかった中型獣が処分されて、報告されない事例も多くあると思われます。
 ハクビシンは野鳥や子猫や子ダヌキなども襲い、それらを食べた痕が天井裏で見つかることもあります。「自然の話題」でもとり上げていますが、ハクビシンと間違われるのがアナグマです。アナグマは半地中のミミズを食べるのが主で、屋根裏に入ることもありません。
 いずれにしても、動物を追い出した状態で、床下の通気口や隙間をふさぐことをお願いしています。そうでないと、一匹を捕まえたとしても、また別の個体が入り、根本的解決にならないので。
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2頭で連れ立って歩くアナグマ。イタチ科で、タヌキに間違えられるほどずんぐりしている。



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2015年04月13日

浅間鳥獣保護区でのシカの捕獲

 近年、浅間山麓ではシカの分布が高標高地域にまで広がり、大きな問題になっています。樹皮が剥がされたり、草本植物が食べられたりと、植生には深刻な影響が見られ、それが他の動物に及ぼす間接的な影響も心配されています。
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 軽井沢町では浅間山麓の生態系を保全するためにシカの個体数調整を試みてきましたが、高標高地域でシカを捕獲するのは簡単ではありません。雪が深く、人や車が簡単に入っていけないからです。また、浅間鳥獣保護区内にはカモシカやツキノワグマが多く生息しているので、罠をかければ誤ってそれらの動物誤って捕まえてしまう可能性も高いのです。
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 私達は、軽井沢町からの委託を受け、2012年から浅間鳥獣保護区内で銃器によるシカの捕獲を行ってきました。シカを撃つのは、山梨に住む腕利きのハンターさんです。これまで毎年30頭ずつ、合計90頭のシカを捕獲しました。これらのシカからは、体の大きさや胃の中の食物組成、妊娠率など、できるだけ多くの情報を得て、科学的な分析を行っています。シカの分布拡大の原因を究明し、今後の対策に役立てるためです。私達は、浅間山麓の生態系保全のために、今後もこのような活動を続けていくつもりです。
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撃ったシカから個体の情報を得るためのサンプリングを行っているところ



 
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