2014年11月05日

目的のわからない人為的移入

 地域の恥をさらすようですが、身近な川で北米原産のウチダザリガニをみつけてしまったのは、2012年でした。地元にはその前年から気づいている人もいるようでしたし、ザリガニの大きさからいって、5〜6年前から入っている可能性が考えられました。誰が何の目的で放したのか、まったく見当がつきません。
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 北海道の湖で大繁殖し、問題になっています。マリモなどの被害もあるため、ダイバーが潜って駆除しているほど。本州では猪苗代湖が有名で、夏には捕まえて食べる大会も催されています。特定外来生物ですが、その場で殺して食べる分には構わないのです。
 一番いけないのは、捕まえて飼育し、飼いきれなくなって適当なところに逃がす、というパターン。そのため、生きた状態で持ち運ぶことが法律で禁じられているのです。
 私たちは長野県環境保全研究所とともに、生態系からの排除を進めています。これまでの3年間で110匹以上を捕獲・駆除しました。おそらく水温や川底の環境の関係で、生息範囲は限られていますが、爆発的に増えないよう、数を押さえ込んでおかなくてはなりません。
 外来種は、地域固有の生物多様性の大敵です。外国の生物が侵入し、生態系が何となく落ち着いて安定してしまう頃には、地域のオリジナリティをなしていた在来種がたくさん犠牲になっているのです。


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2013年10月09日

神津牧場での自然体験プログラム・2013夏(2)

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牧場内を流れる渓流
 神津牧場での自然体験プログラムの2つ目は、「水生生物を捕まえよう」。ほとんどの子供がふれたことのない、源流部のきれいな川に入り、水の温度やきれいさを体感してもらうものです。
 『理化学的水質判定』(水を採取し直接化学的分析をして水質を判定する方法)と、『生物学的水質判定』(水中の生物相から水質を判定する方法)を利用して、神津牧場の水質を調べました。
 理化学的水質判定では、牧場内の渓流で採取した水と、あらかじめ用意した汚れた水を使って、アンモニウム態窒素(NH4)、硝酸態窒素(NO3)、りん酸態りん(PO4)の測定をし、値の違いをみました。牧場内の渓流で採取した水の測定結果は、アンモニウム態窒素(NH4):0..2mg/L、硝酸態窒素(NO3):0.2〜0.5mg/L、りん酸態りん(PO4):0.02mg/Lで、断然きれいな水であることが確認されました。
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エルモンヒラタカゲロウ・ナガレトビケラ・ヒゲナガカワトビケラの幼虫
 生物学的水質判定では、みんなで渓流に入って水生生物を探した結果、次のような生物が採集されました。カゲロウ目ではエルモンヒラタカゲロウの仲間、カワゲラ目のカワゲラの仲間、トビケラ目ではナガレトビケラ、ミヤマシマトビケラの仲間、ヒゲナガカワトビケラ、さらに、ナミウズムシ、サワガニ、ヤゴ(トンボの幼虫)の一種、アメンボの一種、イワナ、ハコネサンショウウオ(死骸)。
 実際に捕れた生物の中に、『きれいな水質の指標になる生物』がどれぐらいいたかを調べ、ほとんどがそれに該当する生物だったことを確認してもらいました。

 以上の2つの水質判定結果から、「理化学的」にも「生物学的」にもきれいな水であることを実感していただきました。また、水を汚さないようにとの配慮から、川と草地との間に森を配置している神津牧場の取り組みについてもお話ししました。自分たちの暮らしと水の汚れの関係を考え、きれいな水のある暮らしをするためにはどうしたらよいか、考えるきっかけにしていただけたように思います。
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源流の伏流中で育つ、ハコネサンショウウオの幼生



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2013年10月08日

神津牧場での自然体験プログラム・2013夏(1)

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(左)お昼どき、ジャージー牛が搾乳のために、ほとんど自主的に行進してくる。人気の光景
(右)ネイチャークラフトのイベント風景

 群馬県下仁田町、ほぼ長野県境の標高1,100mの高原に、神津牧場があります。ここは、日本で最初の洋式牧場として発足し、おいしいソフトクリームとジャージー牛でも有名です。2013年夏、あーすわーむは神津牧場と協同で、2つの自然体験プログラムを行いました。
 神津牧場とあーすわーむは、野生生物調査などを通して以前から交流があり、牧場周辺の資源活用について話し合いを持ってきました。牧場の畜産資源と周辺の豊かな自然資源の魅力を、多くの方に体験していただき、環境教育やグリーンツーリズムなどを通して社会貢献したいという両者の思いがあります。
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 この夏は、予約制ではなく、来訪者に気軽に体験していただけるプログラムを用意しました。木を利用した「ネイチャークラフト」と、牧場内を水源とし、やがて利根川に流れ込む渓流を利用した「水生生物を捕まえよう」という2つのプログラムです。
 「ネイチャークラフト」は、基本的に自由な作品づくりですが、頭が動く、手足が動く、尾が動くなど、動くしくみを取り入れることで、より楽しめる作品作りへ導きました。何を作るかイメージが固まるまでは、皆さん時間がかかりますが、決まってからは次々と創造が膨らみ、子供も大人も夢中で楽しんでいました。大人の想像を超える子供たちの発想には、感動させられることもありました。木という素材を楽しみながら、自然に親しむきっかけにしていただけたようです。
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